ダブルチェックは無意味!?

ここが変だよ看護師

どうもこんにちは。さといミルクと申します。

病棟で確認不足のインシデントなどが起きると、

ダブルチェックで確認行為を強化するような対策がなされがちですよね。

でもそれって本当に意味のある改善策なのでしょうか。

ダブルチェックは無意味!?

結論から申しますと、むやみに行うダブルチェックは

ほとんどが無意味です。

それどころか、逆効果となり、本来起きなかったエラーの原因にもなりえます。

その理由を解説していこうと思います。

ダブルチェックってなに?

ダブルチェックとは、文字通り二人の眼で確認を行うことです。

一人が勘違いしていたり、見落としていても、

もう一人がそれに気づくことで、エラーを防げるという考え方ですね。

しかしこれには落とし穴があります。

ダブルチェックの落とし穴とは

まずは、人員が割かれるということ。

もちろん二人でのチェックですから、ダブルチェックが必要な場面では

二人の看護師が一か所に集まり、一連の確認行為を行う手間があります。

また時間差のダブルチェック(一人がチェックした後に、もう一人がチェックする方法)でも

それぞれの人員が一定の時間、確認行為のために業務を止める必要があります。

これによって生じる「繁忙」によって、

他の業務が滞り、おろそかになっては本末転倒です。

もう一つの落とし穴は、リンゲルマン効果の存在です。

リンゲルマン効果とは、

協働作業を行う際、集団人数が増えると一人当たりの課題遂行量は減少するという現象です。

一人では100%の力を発揮できても、二人では93%、三人では85%と

一人あたりの力が落ちて行ってしまうという論文結果があります。

みなさんも、病棟でのダブルチェックの場面を想像してみてください。

自分一人で、絶対に見落とせない確認行為を行っているときと

誰かと二人で同じ確認行為を行っているときを。

二人で行っているときは、「きっと自分が見落としてももう一人が見ていてくれる」

というバイアスがかかってしまうものです。

これは誰しもがそうであり、人間の特性なので仕方のないことなのです。

以上がダブルチェックの落とし穴です。

なぜダブルチェックがこんなにも横行しているのか

私見ですが理由としては

簡単に思いつくから。

インシデントの振り返りをしているとき、

「なにか改善策をひねり出さなければいけない」と考えるはずです。

そのときに例えば、「新たなデバイスを導入する」や

「基準を見直す」といった手間のかかる改善より

自分たちが一苦労するだけで、改善策として成立するダブルチェックという魔法の言葉

ついすがりたくなりますよね。

その結果、インシデントの度にチェック機構が増えたり、ダブルチェックが増えたりするのです。

そしてダブルチェックが横行する最大の理由が

ダブルチェックを「神聖な牛」と考えているからです。

はあ?と思いましたよね。

ダブルチェックは神聖な牛

インドで牛は神聖な生き物として扱われているというところから

神聖にして犯すべからざる人(もの)→批判・攻撃のできない人・思想・制度など

という意味合いで使われているようです。

要するに、看護師にとって、ダブルチェックとは、

批判的な意見を出しようがない、絶対的な存在となってしまっているということです。

上司からすれば、コストはかからないし

スタッフが自主的に提案してくれている改善案であり、

文句のつけようがありません。

スタッフ目線は、上司の手前なんとかひねり出した改善策であり、

それ以外の方策は、とてもじゃないけど現実的じゃないように思えて口に出せない。

以上が病棟でダブルチェックが横行する理由です。

このように業務として設定され、行われるダブルチェックは

はっきり言って無意味です。

なぜ無意味なのか

前述したとおり、ダブルチェックには落とし穴があり、

かつ、ほとんどの人はその落とし穴を知らないので、

ダブルチェックしていてもエラーが起きる

→チェックを増やす

→落とし穴によりエラーは減らない

という無限ループに陥ります。

チェックのチェックなんてものも生まれたりして、

業務が煩雑になる一方です。

では確認行為を強化したいときはどうすればよいのか

看護師業務において、確認行為の精度を上げることはとても重要な課題です。

ダブルチェックがだめならどうすれば良いのかという疑問が浮上します。

それは

ダブルチェックの対象を絞る

一人での確認行為の確実性を高める

対策を整理整頓する

機械によるチェックを活用する

です。

ダブルチェックの対象を絞る

ダブルチェックって無意味なんじゃないの?

とツッコミが入りそうですが、前述したことを振り返ってみると

その特性やリスクを理解せずに、むやみに行うダブルチェックは無意味ということです。

ダブルチェックを行う場面を絞ることで、ダブルチェックのリスクを減らしつつ

有効な効果のみを得られる確率が上がるというデータがあります。

ダブルチェックが有効な場面の例

・命に直結する業務(麻薬の調剤やインスリンの用意など)

・判断の自信がないとき(知識を補完する)

などがあります。

一人での確認行為の確実性を高めるためには

指差し、指なぞり、声出し確認です。

よく電車の運転手さんも行っていますよね。

意識を覚醒させることで、確認行為の精度を高める効果があります。

なんでもかんでもダブルチェックするより、よっぽど効果があります。

対策を整理整頓する

もうすでにダブルチェックであふれていませんか?

整理整頓を行い

要るものと要らないものに分け、要らないものを捨てる

また残った要るものをすぐに取り出せるように置くことが必要です。

そして勇気のいることと思いますが

小さなリスクは整理して捨ててしまうことも手段の一つです。

機械によるチェックを活用する

電子カルテ化が進み、その機会は多くなっていると思います。

機械が判定したことを人間が確認する

機械+人間によるチェックを活用することで、

人員のリソースを減らすことは無く

また融通の利かない機械のチェックを

融通の利く人間がチェックすることで、

確認行為の精度は高まるといわれています。

やらないよりやったほうがいい!という呪いの言葉

これ言う人いますよね。

手間暇かけたがる人。

しかし、人・もの・金・時間なぞのリソースは有限です。

私が提唱したいことは、

やらないで済むならやらないほうが良い!です。

何かをやるときは、そのメリット、デメリット、そのためのリソースをよく考えて

むやみに実行しないことが大切です。

時間的に余裕ができることで

無意味なダブルチェックを減らすことで

時間に余裕ができて、確認行為をしっかり行えるようになるって、オカシな話しですよね。

でもそれは事実です。

確認行為って、だれかに見られるわけじゃないから

つい省略できてしまうんです。

余裕がないならなおさら、悪意が無くても省略してしまうんです。

「なんで確認行為をしなかったの!」なんて言われても、無理なものは無理なんです。

怠慢だとかサボリだとか思われがちですが、

確認行為をできるような環境を整えることが管理者の勤めだと思います。

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